XRでプロ野球の歴史を振り返る
XRとは?
XRは下記の式で表される打者の得点能力を評価する指標です。式の右辺の単打や二塁打といった項目に打者の残した成績を入力するとその打者がどの程度チームの得点創出に貢献したか予測することが出来ます。つまりある選手のシーズンの打撃成績を入力したところ20という値が得られれば、その選手はシーズンを通して20点分の得点を創出したと考えられます。
日本版XR
=単打×0.498+二塁打×0.810+三塁打×0.900+本塁打×1.456+{四死球-敬遠 }×0.332
+敬遠×0.167+犠飛×0.505+盗塁×0.202+盗塁死×(-0.482)+{打数-安打}×(-0.105)
+併殺打×(-0.374) (※1)
(※1) 従来のXRはメジャーリーグのデータを用いて重回帰分析を行い、成績項目や係数が決められていましたが、ここでは日本のプロ野球に合わせて改良された日本版XRを用いています。
このXRの式に注目しプロ野球において「各打撃成績によって創出された得点は全得点の何%くらいにあたるか」下記のように定義して算出してみました。
ある打撃成績によって創出された得点が全得点の何%にあたるか
=XRのある打撃成績の項÷(XRの式で係数が正となっている8つの打撃成績の項の合計)
実際に2014年プロ野球の記録を使用し、「本塁打」によって創出された得点が全得点の何%くらいにあたるか計算してみましょう。
「本塁打」によって創出された得点は全得点の何%か
=本塁打×1.456÷(XRの式で係数が正となっている8つの打撃成績の項の合計)
すなわち
算出される値は0.163。つまり2014年のプロ野球の得点の16.3%は本塁打によって創出されていたと推測できます。
ホームランが試合を彩った1980年、急減した2011年
三塁打によって創出された得点割合が高かった1950・60年代
次に三塁打によって創出された得点割合を見てみると1950年~62年までの期間はいずれも3.0%以上を記録しており、現在に比べ多くの割合を占めていたことが分かります。
この1950年から62年の期間はシーズンの合計三塁打数が50を超えたチームが8チームありました。1962年以降チームのシーズン三塁打数が40を超えたのは、1997年の西武(=43三塁打)の1度だけということを考えるといかに突出した記録であったか分かります。この当時阪急が使用していた西宮球場は中堅が119m、両翼が101mと非常に広く両翼付近の外野フェンスが高かったこともあり他球場と比べても三塁打が出やすく本塁打が出にくい球場でした。中日が使用していた中日スタヂアムも1951年のシーズン中に火災で焼失するまでは中堅122m、両翼100mの広さを誇っていました。
東急は1961年のシーズンを最後に駒沢野球場を1964年の東京オリンピックの会場整備のため明け渡し、神宮球場へ本拠地を移しました。また1960年頃から西宮球場にはラッキーゾーンが設置され三塁打が出にくい球場へと変貌を遂げました。
こういった変化が1960年代前半を境に三塁打によって創出された得点割合の減少および本塁打によって創出された得点割合の増加というグラフの形に表れています。