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イベントレポート EVENT REPORT

得点期待値、得点確率でプロ野球を考えるとどうなるか?~「勝てる野球の統計学」トークライブに向けて(後編)~

金沢 慧

引き続きトークライブ参加者募集中!

※前編はこちら


 「勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス」の出版記念トークライブが7月21日に行われます。この本は「得点期待値」をベースにしてセイバーメトリクスを解説しているため、イベントでも得点期待値に触れていく予定です。前編ではアウトカウント別に得点期待値を見てみましたが、今回はもう少し深く状況別の得点期待値を比較してみたいと思います。特に、得点期待値でよく話題になる「送りバント前後」の状況に注目してみましょう。

※トークライブの案内はこちらへhttp://www.datastadium.co.jp/event/20140721.html

「0アウト一塁」と「1アウト二塁」の得点期待値、得点確率を比較

 こちらは2004-13年のデータを用いた「0アウト一塁」と「1アウト二塁」の得点期待値、得点確率の比較になります。矢印は状況の変化による得点期待値、得点確率の変化を表しており、矢印が「右上」を向けばともに上昇、「右下」を向けば得点期待値は下落、得点確率は上昇、「左上」を向けば得点期待値は上昇、得点確率は下落、「左下」を向けばともに下落を表しています。

 「0アウト一塁」から「1アウト二塁」への状況の変化の場合、矢印は「左下」を向いていますので、得点期待値、得点確率ともに下がることを表しています。つまり、「0アウト一塁」から送りバントを成功させることで、得点の可能性が下がることを表しています。

 もちろん、「0アウト一塁」から「1アウト一塁」や「2アウト走者なし」にするよりは下落幅が少ないですし、そもそも得点確率の下落幅はわずかです。そのため、相手投手や打者の能力次第では送りバントも有効な作戦となるでしょう。

 ただ「0アウト一塁」から「1アウト二塁」にするプレーが基本的に得点の可能性を減らしていることは、頭に入れておくべきだと思います。

「1アウト一塁」と「2アウト二塁」の得点期待値、得点確率を比較

 送りバントが行われる他の状況も見てみましょう。「1アウト一塁」から「2アウト二塁」への変化を見ると、矢印の方向は先ほど以上に明らかな「左下」を向いています。つまり、得点期待値、得点確率ともに下がることが分かります。

「0アウト一二塁」と「1アウト二三塁」の得点期待値、得点確率を比較

 「0アウト一二塁」から「1アウト二三塁」への変化は少し様子が違います。矢印の方向は「右下」を向いており、得点期待値は下がるものの、得点確率は上がることが分かります。失敗のリスクを考慮する必要はありますが、どうしても1点が欲しい場面で「0アウト一二塁」から「1アウト二三塁」にすることは合理的といえそうです。

「1アウト一二塁」と「2アウト二三塁」の得点期待値、得点確率を比較

 ただし、「1アウト一二塁」から「2アウト二三塁」への変化は先ほどと異なります。矢印の方向は「左下」を向いており、得点期待値、得点確率ともに下がることが分かります。


 これら4つの状況変化による得点期待値、得点確率の変化をまとめると、以下のようになります。

「0アウト一塁」→「1アウト二塁」 = 得点期待値、得点確率ともに下がる
  ※ただし、得点確率はわずかな下落(約1%)
「1アウト一塁」→「2アウト二塁」 = 得点期待値、得点確率ともに下がる
「0アウト一二塁」→「1アウト二三塁」 = 得点期待値は下がるが、得点確率は上がる
「1アウト一二塁」→「2アウト二三塁」 = 得点期待値、得点確率ともに下がる

 今回のデータはあくまでも平均的な値であり、相手投手や打者の能力によって得点の可能性が変わるのは確かですが、基本的に送りバントが得点期待値や得点確率をどう変化させるのかを頭に入れながら野球を観戦すると、普段とは違った風景が見えてくるのではないでしょうか。

 ちなみに、今回紹介した得点期待値と得点確率は10年間の合計のデータですが、年度ごとに見ることもできます。例えば2011年と2012年のデータは統一球の問題もあり、少し様子が違っています。

7月21日に「勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス」出版記念イベントを行います!

 年度別の得点期待値、得点確率がどのような推移を見せているのかなど、この続きは「勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス」出版記念イベントにて紹介する予定です。まだお席がありますので、よろしければぜひご参加ください。

※トークライブの案内はこちらへhttp://www.datastadium.co.jp/event/20140721.html