スラッガーの証「TTO率」の高い打者は誰?
運の影響を受けない3つの結果
「 TTO率 = ( 本塁打 + 四球 + 三振 ) / 打席 」
皆さんは「TTO」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは「Three True Outcome」の頭文字をとったもので、日本語に無理やり翻訳するなら「3つの純粋な打席結果」といったところだろうか。この3つの結果とは本塁打、四球、三振、すなわちセイバーメトリクスにおいて運に左右されにくい、その選手の真の実力をより反映しやすいと言われている指標のことだ。インプレーの打球が多かれ少なかれ運の影響を受けることは以下の記事の中でより詳しく説明されているので別途参照いただきたい。
この3つの結果の合計数を打席数で割ったものが「TTO率」である。MLB愛好者の方には「アダム・ダン率」といったほうがなじみ深いかも知れない。TTOは投手と打者の間のみで決着されるもので、そのほかの野手が関与することは基本的にあり得ない。つまり、TTO率が高い打者が打席に入っている時、守備についている野手は暇を持て余しているということだ。今回はこのTTO率により深く踏み込んでいくことにしよう。
まずは2015年の両リーグを通じた規定打席到達者内のランキングをご覧いただきたい。
12球団イチのTTO集団、西武
あまり驚くような結果ではないかもしれないが、NPBを代表するスラッガーたちが並んでいる。1位の中村剛也(西武)は、四球はさほど多くないものの、やはりパ・リーグ最多の本塁打数と両リーグ断トツの三振数のおかげでこのランキングでも最上位につけている。2位のメヒア(西武)も四球を多く選ぶタイプではないものの、中村に次いでNPB全体2位の三振数が彼のTTO率を押し上げている。
西武からは森友哉も5位にランクインしており、チーム全体では32.9%と2位の広島を大きく引き離して12球団中1位となっていることがわかる。ランク外ではあるが12位の浅村栄斗も含めて、このチームは大味な打者が揃っている。
3位の丸佳浩(広島)は19本塁打、セ・リーグ最多の143三振、そして両リーグトップの94四球とバランス良く3つのカテゴリーで数字を残している。バランスという観点で見た場合、彼が真のTTOキングと言えるかもしれない。
次はランキングの反対側、TTO率が低い10人に焦点を当ててみよう。
積極ミートタイプか、大型扇風機タイプか
藤田一也(楽天)、後藤光尊(同)、クルーズ(ロッテ)、雄平(ヤクルト)の4人はいずれもP/PA(1打席当たりの投球数)の低さで各リーグのトップ5に入っており、4人とも深いカウントになる前に打ちに行く傾向があることがうかがえる。これにより四球・三振ともに機会自体が少なくなっている模様だ。中村晃(ソフトバンク)と田中賢介(日本ハム)の2人は1打席当たり4球以上とそれほど早打ちではないものの、コンタクト率でNPB全体1、2位につけており、バットに多く当てているために三振が減り、それがTTO率を下げているようだ。
最後に、NPB歴代打者の生涯通算TTO率ランキングを見てみよう。多くの外国人打者が名を連ねる中、堂々の1位は1980年代から90年代にかけて近鉄で活躍したブライアント。52.7%という数値をたたき出し、2位以下を大きく引き離している。日本人選手ではやはり中村がトップ。TTO率から見た中村の打撃内容は、球史を代表する外国人スラッガーと双璧をなすものと言っていいだろう。
小技とスピードを生かした日本的野球において異彩を放つTTOキングたち。彼らのパワーに圧倒され、豪快なスウィングに痺れ、選球眼にうなる。それもまた野球の醍醐味かも知れない。