ドラフトコラム~各球団レビュー~
総勢116名指名
日本シリーズも終了し、本格的にストーブリーグが始まりました。今回はストーブリーグ最初のイベントである、ドラフト会議について振り返っていこうと思います。
10月22日、ドラフト会議が行われ、育成を含めると前年より12名多い116名が指名されました。育成選手制度導入後初めて支配下選手の指名が10位まで達し、例年より多くの選手が指名されたことが分かると思います。
中でも、独立リーグからの指名が12名と過去最多の人数となりました。独立リーグ出身選手は年々頭角を現しており、今回の12名がどのような活躍を見せるか注目していきたいです。
それでは、各球団の指名状況を振り返っていきましょう。
弱点を補強できたDeNA、できなかったヤクルト~セ・リーグ~
まずはセ・リーグの指名から振り返りたいと思います。
セ・リーグの覇者・ヤクルトは、早々と指名を公言していた髙山俊を抽選で逃しました。ポジション別のチーム打率が、内野手は.294に対し外野手が.246。外野手の打撃に課題を持つチーム事情を考えると、苦しいドラフトとなりました。その外野手には、5位で山崎晃大朗を指名。俊足巧打が売りで、1年目から定位置争いに食い込めることを期待したいです。
三軍の設立を発表した巨人は、1位指名の成長著しい桜井俊貴、俊足外野手の重信慎之介を筆頭に、育成を含めると12球団最多の16選手を指名。中でも、BCリーグに所属の武蔵ヒートベアーズから4選手が指名され、注目を集めました。
金本知憲新監督の阪神は、即戦力野手を上位指名しました。1位では競合の末、髙山の交渉権を獲得。2位指名には同じく明治大の坂本誠志郎を正捕手候補として指名。両者ともに手薄なポジションなだけに早い段階での活躍が見られそうです。
3年ぶりのBクラスに沈んだ広島は、即戦力投手が中心のドラフトとなりました。今年になって大きく評価を上げた岡田明丈の単独入札に成功。下位を見ると6位で仲尾次オスカルを指名。近年では両リーグともに、下位指名の社会人出身投手が1年目からフル回転する例も珍しくありません。深刻な左腕不足のチームにとって、救世主となる可能性も大いにあるでしょう。
ベテラン勢の引退に伴い若返りが急務な中日は、高校No.1左腕・小笠原慎之介の交渉権を獲得。弱点である捕手には、上位指名の候補にも挙げられていた社会人No.1捕手・木下拓哉を3位指名でき、満足のいく結果ではないでしょうか。
ラミレス新監督のDeNAは左右の即戦力投手、今永昇太、熊原健人の両取りに成功。リーグワーストのチーム防御率を記録した投手陣の整備に着手でき、弱点を補えた満点に近いドラフトでした。
野手に偏った楽天、投手中心の西武~パ・リーグ~
パ・リーグ連覇のソフトバンクは、3球団競合の末、高校No.1投手との呼び声が高い髙橋純平の交渉権を獲得。支配下での指名は高校生のみと王者の余裕すら感じられる素材重視の指名となりました。
「その年の1番良い選手を指名する」日本ハムは、2度抽選を外したものの、高い潜在能力を持つ左腕の上原健太、加藤貴之を上位で指名。手薄な左投手を立て続けに補強しました。
終盤の追い上げでクライマックスシリーズ進出を果たしたロッテは、抽選の末、3拍子そろったスター候補・平沢大河の交渉権獲得に成功。伊東勤監督は「今年の野手ではNo.1」と評価しているだけに早い段階でのデビューも期待されます。
投手陣の補強が必須の西武は、早々と1位指名を公言していた多和田真三郎を先発候補として単独指名。3位まですべて大学、社会人の即戦力投手を指名し、候補リストの8割を投手が占めるといわれていた通り、投手中心のドラフトとなりました。
世代交代を図りたいオリックスは、将来の4番を期待されるスラッガー・吉田正尚の一本釣りに成功。規定打席に達した外野手登録の選手が糸井嘉男のみと外野手を固定できなかっただけに、開幕スタメンの可能性も十分考えられます。その他にも、速球派右腕の近藤大亮や今夏甲子園準優勝投手の佐藤世那などを指名し、バランスよく補強できたといえるでしょう。
2年連続最下位に沈んだ楽天は、昨年までのドラフトとは一変し、野手中心のドラフトとなりました。抽選の末平沢は逃したものの、今夏の甲子園で一躍ヒーローとなったオコエ瑠偉を1位指名。その後も吉持亮汰、茂木栄五郎とスター性のある野手を次々と指名。深刻な課題である攻撃力向上に取り組みました。
俊足の野手陣に上位指名が集中
今年のドラフトは意外な上位指名、指名漏れが多く見られました。中でも、今回は俊足巧打の野手に需要が多く集まった印象です。
そこで今回は、ドラフト会議前にBaseball LAB編集部が独自でおこなったシミュレーションを元に振り返りたいと思います。
※ドラフトシミュレーションの詳細情報はこちら
俊足タイプの選手をピックアップすると、1位指名の髙山、平沢、オコエはシミュレーション通り順当に1位指名を受けましたが、2位指名まで見てみると吉持、重信はともに上位指名を予想していませんでした。特に重信は指名漏れと予想しており、思いもよらない結果となりました。
逆に、上位指名候補として挙げられていたスラッガー・谷田成吾は最後まで指名されませんでした。打撃より足の方が、確実に一軍の戦力になり得ると評価する傾向にあるといえるでしょう。
指名予想した中で漏れた選手は?
シミュレーションで指名予想をしていた中で、指名漏れした選手も見ていきましょう。
表を見てもらうと分かるように、社会人投手に指名漏れが多くなっています。現に、実際の指名では、ドラフト1位で社会人の選手は指名されませんでした。これは希望入団枠制度を含めると2002年以来の出来事で、今年はいかに社会人の選手が敬遠されていたかが分かります。
上位指名を予想していた猿川拓朗は、粗削りで安定感に欠ける点を指摘されており、社会人投手は特に安定感のある投手が求められていると考えられます。
ストーブリーグ最初の大きなイベントであるドラフト会議。例年より多くの選手が指名された中で、球団ごとの思惑はもちろん球界全体の指名にも傾向が見られました。
FAやトレードに外国人補強でも、どのような動きを見せるのか注目です。
※文章、表中の数字はすべて2015年11月2日時点