シーズン終盤、9月に爆発したチーム・選手を振り返る
ペナントレースもいよいよ終盤の9月に突入。リーグ優勝はもちろん、クライマックスシリーズ進出権を賭けた3位争い、そして個人タイトルの行方にも注目が集まってきます。今回は9月をテーマにして話を進めていきましょう。
9月に首位奪取→優勝を劇的に決めた近鉄
まずは9月の快進撃で逆転優勝したチームを見てみましょう。過去30年のデータを見ると、8月31日時点で首位ではなかったチームがリーグ優勝したケースは右記の8例。1991年は両リーグとも逆転優勝が起きていました。また98年の西武は「快進撃」と呼べるほどの勝率ではなかったですが、日本ハムが7勝14敗と失速したためこの逆転現象が起きています。
また2001年には近鉄が優勝を飾っています。6連勝で一気に優勝へ王手をかけた9月26日、北川博敏の代打逆転サヨナラ満塁ホームランで優勝が決まった、といえば記憶にある方もいるでしょう。ちなみに過去8例でこの年の近鉄だけが9月中に優勝と、勢いそのままに混戦から一気に逃げ切っていました。
1年目から休む暇なしの稲尾
過去には9月のチームの快進撃を一人で支えた大投手がいます。それが稲尾和久です。1年目の1956年9月、先発6度、リリーフ12度で、実に月間18登板を記録。これは2リーグ制後の月間最多登板記録(2013年5月にロッテ・益田直也も18登板)です。しかもこの間の成績が74回2/3を投げて6勝1敗、防御率1.44というから驚きです。
稲尾はこの2年後の9月にも16試合に登板して8勝1敗、防御率0.80を記録。チームも1956年には最大6.5ゲーム差を、58年には最大11ゲーム差をひっくり返す逆転優勝。56年から達成した3連覇は、稲尾の終盤の活躍なくして語れないでしょう。
9勝負けなしの9月!
稲尾は58年の9月に8勝1敗を記録しましたが、翌年その成績を上回る数字をマークした投手がいます。南海の杉浦忠です。入団2年目の59年9月、先発6試合、リリーフ5試合で65回2/3を記録。先発で6勝0敗、リリーフでも3勝を上積みし、9勝0敗の成績を残します。失点もわずか2点だけで、防御率は驚異の0.25。8月から続いていた連勝を11に伸ばすなど(シーズン終了まで数字を13に伸ばす)、圧倒的な成績をマーク。38勝4敗でチームを日本一へと導き、リーグ史上初めて満票でシーズンMVPに選ばれています。
一人ケタ違いの数!?一気の逆転で初タイトル
ここからは打者に目を向けてみましょう。9月の爆発によってタイトルを奪った例はいくつかあり、72年は阪急・長池徳二が月間15本塁打と一気に量産しています(これは過去のコラムで触れていますので、こちらもご覧ください)。
今回は盗塁にスポットを当てます。現広島監督の緒方孝市が95年に自身初タイトルとなる盗塁王に輝きますが、後半に見事すぎる逆転劇を見せました。
この年の5月、同僚の前田智徳がアキレスけん断裂で離脱。開幕当時は左腕対策での起用が多かった緒方が、ここからレギュラーに定着します。前半戦を終えた時点ではリーグ6位の10盗塁でしたが、後半戦から猛追。8月に11盗塁と一気に数字を伸ばすと、9月は22試合で21盗塁(失敗1)とさらに数字を増やしました。出塁率.459と塁に出まくったことも奏功し、結局後半戦だけで37盗塁と異次元の数字を残します。見事な初タイトルのこの年から、緒方は3年連続でタイトルに輝くこととなります。
9月の全試合でヒットを放った青木
猛追という訳ではないですが、9月の猛打でタイトルと2つの新記録を樹立したのが、2010年のヤクルト・青木宣親です。なんと9月はチームの全22試合でヒットを放っていました。この間の打率は.420で、8月31日時点では打率はリーグ3位でしたが、9月の猛打で同1位に浮上。そして史上初となる2度目のシーズン200安打達成に加え、最終的には球団記録を更新するシーズン打率をマークと、記録ずくめの年となったのです。
過去10年で9月に強いのは?
それでも最後に笑うのはこのチーム?
阪神の2人の打者が9月によく打っていることが分かりましたが、このチームを忘れてはいけません。近年9月に強さを発揮しているのが、現在3位で阪神を追いかける巨人です。過去10年の勝率は12球団トップの勝率.594。2007年以降は負け越した年がありません。阪神が2人の活躍で逃げ切れるか、それとも3連覇中の巨人が今年も9月に一気に白星を増やすのか。今年も9月の戦いから目が離せないでしょう。