5人の新監督。彼らが目指す野球とは? タイムリーdata vol.19
プロ野球12球団のキャンプが始まり、1週間がたとうとしています。2月6日に広島とDeNAの一軍が今キャンプ初のオフを迎え、すでに他球団は第2クールに入りました。ここまでの報道を見ると、各球団の主力選手や新戦力にスポットライトが当たるなか、新監督が精力的に指導する姿も見受けられます。2015年のプロ野球には5人の新監督が誕生しました。今回のタイムリーdataでは、彼らの現役時代のデータや過去の采配を振り返ってみたいと思います。
機動力野球の浸透を目指す ~緒方孝市~
まずは、24年ぶりのリーグ優勝を狙う広島の緒方孝市監督。現役時代は3拍子そろった、1990年代のセ・リーグを代表する外野手でした。緒方監督は就任会見で「攻撃面ではもっともっと使えるはずの機動力を全面に出していきたい」と話しています。第1クールの初日には、ドラフト1位ルーキー・野間峻祥に対して、石井琢朗守備走塁コーチの言葉を借りながら「スピード」を絶賛する姿が報じられるなど、その目指す野球が垣間見えました。
そんな緒方監督は、現役時代の95年に「10試合連続盗塁」というセ・リーグ記録を樹立しています。9月19日の時点でリーグトップの33盗塁を記録していましたが、2位のヤクルト・飯田哲也(現・ソフトバンクコーチ)との差はわずかに2個。緒方は20日以降の10試合で計13盗塁を決めるなど、最終的にシーズン47盗塁で初タイトルを獲得しました。その後3年連続で盗塁王に輝いた緒方監督。機動力を前面に押し出した全力野球で、チームの「常昇」を狙います。
総合力で巻き返しを誓う ~真中満~
2年連続リーグ最下位からの巻き返しを図るヤクルト・真中満監督。現役時代はシュアなバッティングを武器に、通算1122安打を記録しています。その真中監督は就任会見で「大事にしたいのはチーム力」と語りました。キャンプ地の沖縄・那覇で行われた必勝祈願でも「エースや4番に頼るのではなく、総合力でやっていきたい」と話すなど、レギュラーだけではなく、控え選手の起用にも注目が集まります。
現役晩年には代打の切り札としても活躍した真中監督。07年には98回の代打起用で31安打を記録しました。ヤクルトには、指揮官の現役時代の背番号31を受け継いだ松元ユウイチなど、代打起用に応える力を持つ選手もそろっています。投手陣を含め、チーム全体がひとつとなって上位進出をうかがうヤクルト。真中監督の「改革」1年目に期待です。
投手陣のレベルアップを図る ~工藤公康~
昨季の日本一球団・ソフトバンクを率いる工藤公康監督。今年の新監督の中では最も古い1982年に一軍デビューを果たしましたが、現役を引退したのは2010年でした。古くからの野球ファンも、若い野球ファンにも、そのマウンドに立つ姿が印象に残っている存在でしょう。
12球団で唯一投手出身の工藤監督。昨秋の時点から若手ピッチャーが投球中のブルペンへ精力的に足を運び、今キャンプでも投手陣を見守る姿や直接指導する様子が見受けられます。工藤監督は現役時代に通算224勝を挙げました。先発だけではなく、横浜(現・DeNA)に在籍した09年には救援で45試合に登板するなど、リリーフでも通算163試合に投げた実績を持っています。過去に14度出場した日本シリーズでは、通算10試合にリリーフとして登板。1986年の第5戦には2番手で登板し、延長12回裏にバッターとして広島・津田恒実からサヨナラ打を放つ活躍を見せました。プロ野球の投手として、さまざま経験を重ねてきた工藤監督。その手腕に要注目です。
自身の後継者育成へ ~田邊徳雄~
昨季はシーズン途中から監督代行を務め、今年から正式に監督就任が決まった田邊徳雄監督。現役時代は常勝・西武の遊撃手として、ベストナインとゴールデングラブ賞を2度獲得しています。
積極的な足攻で得点力アップを図る ~大久保博元~
昨季はリーグ最下位に沈んだ楽天。再スタートとなる今季の指揮を執るのは大久保博元監督です。昨年は二軍監督としてチームを率いていた大久保監督ですが、7月2日からは一軍監督代行を任されて計17試合を戦っています。
監督代行を務めた期間のチームは、借金1と善戦を見せました。目を見張るのは盗塁企図数で、それまでの69試合で40回(成功:19)だったものが、大久保監督代行のもとでは17試合で22回(成功:16)を記録。中でも、松井稼頭央と森山周は3盗塁ずつ決めました。その2人に、12年の盗塁王・聖澤諒を加えた3人を今季の1番打者候補に挙げるなど、「走れる選手」を優先する方針を打ち出しています。今キャンプ初のオフとなった5日には「運動会」と題して選手たちをさまざまな競技で争わせるなど、ユニークなアイデアが注目を集める大久保監督。チームを「一致団結」させ、常勝球団の形成を期待したいところです。
選手としての実績や、引退後の指導歴も異なる5人の新監督。あくまでも主役は選手ですが、その手腕に注目が集まるところです。きっと彼らが今年のプロ野球を盛り上げてくれることでしょう。