「2014年度 統計関連学会連合大会」レポート(前編)
Baseball LAB編集部の上原です。
私は調査中の野球データの分析について統計の学会大会で講演する機会を設けていただき、先日初めて大きな場で発表してきました。そのときの自身の講演内容および聴講した講演を2回にわたって報告します。
後編はこちらです。
まず、この「統計関連学会連合大会」について簡単に紹介します。
日本統計学会等の6つの学会の共催で行う1年で最大のイベントで、統計学の研究者や統計を利用する他学問の研究者が一堂に会して講演・聴講を行う場です。学生や企業所属の方も参加しています。
今年度で13回目となります。大会自体は13~16日の4日間、東京大学にて行われました。
同じようなテーマのいくつかの研究がひとくくりとなり、続けて講演を行います。
データスタジアムからは以下の2つの企画セッションに参加しました。
1.スポーツにおけるビッグデータの活用(9/14)
2.スポーツ統計科学の方法論(9/16)
プログラム詳細は上記リンク(外部)に記載されています。
今回は、セッション「スポーツにおけるビッグデータの活用」における当社金澤の発表、セッション「スポーツ統計科学の方法論」における私、上原の発表を中心に紹介します。
守備の総合指標「UZR」についての講演
金澤の講演は以下の題目で行われました。
プロ野球の守備力を評価するUltimate Zone Rating(UZR)算出の試み
本題のUZRの説明に入ります。まずは全体像。守備の指標化が何につながっていくのかを説明しています。球団のGMや首脳陣視点での需要や利点を挙げています。
UZRの例として、ジーター(ヤンキース)を取り上げていました。MLBでゴールドグラブ賞を5回受賞している守備の名手は実はUZRが低いことが判明! 華麗な守備を見せている印象が強いものの、公式記録では現れない「守備範囲の狭さ」などの影響が反映されるため、総合的な評価は悪くなっているというカラクリです。
いよいよ野手のUZRの算出方法についてです。「守備範囲」「失策」「併殺奪取」「肩力」の4項目の合計で表されますが、今回は主に守備範囲の広さを表す数値を解説しました。公式記録ではカバーしきれない、「打球を捕球したゾーン」や「打球強度」のデータなどを使用しています。
該当ポジションの選手が該当ゾーン内で処理した打球の「安打割合」や「ゴロに仕留める難易度」などを考慮しています。こみいった計算になるため、具体例を挙げての解説です。詳細な計算式は『勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス』をご覧ください。
こんな守備指標UZRですが、まだ課題点もあります。
1番にあげたのはポジショニングを考慮していないこと。同じ打球を処理しても、チーム戦術によって難易度が上がっている可能性もあるからです。ただ、ポジショニングのデータは現状取得することも困難な状況です。MLBで採用されているトラッキングシステム(自動でデータを取得するしくみ)についても紹介しました。
最後に、統計分野への期待を述べて講演を終えました。
他競技に関する講演も
このセッション内では、他に2名の当社社員が講演を行いました。
ラグビーからは須藤が「ラグビーチームにおけるデータ活用事例と課題」の発表を行いました。
取得している試合内のデータの説明や、「攻撃時間/トライ数」「ラインアウト分析」など、現場でのデータ活用事例を紹介しました。
ラグビーにおける分析は映像主体で、データの活用に関してはまだ発展途上だとのこと。今後期待する統計的見方を述べていました。野球・サッカーに比べ浸食してきていない競技ということもあり、質問も盛んに出ました。
サッカーからは久永が「プロサッカークラブの現場におけるデータ活用事例と課題」の発表を行いました。
取得しているデータの説明やメディアでの活用例、試合の分析からトレーニングにつなげるまでの現場でのデータ活用事例を紹介しました。コーチとしてJリーグのクラブに所属していた経験を踏まえた興味深い発表であり、皆さん熱心に聴いていました。