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コラム COLUMN

スピードが導く得点力 ~「GET!ファイターズ」での特集~

新井 雄太

 4/25に「GAORA SPORTS」で放送された番組「GET!ファイターズ」に、野球分析担当としてVTR出演しました。


 番組内では「スピードが導く得点力」というテーマで盗塁成功率や状況別の走者生還割合などのデータを紹介しました。今回は番組内ではお届けしきれなかった情報も含めて補足的に紹介したいと思います。

盗塁数以上に重要な成功率

 2013年の陽岱鋼選手、14年の西川遥輝選手、15年の中島卓也選手と3年連続で日本ハムから盗塁王が出ています。この他にも岡大海選手など俊足を武器にした選手が多いことはチームの特徴の1つです。
 昨季もパ・リーグで最も多い134盗塁をマークしました。そして、盗塁数だけでなく盗塁成功率もパ・リーグ断トツの.779を記録しています。ちなみに盗塁成功率.779という数字は過去10年間のデータで見ても非常に高い部類です。

 番組では得点確率を用いてデータを紹介しましたが、このコラムでは「アウトカウントと走者状況によって、イニングが終了するまでに何点入るか」を表す得点期待値というデータを用いて、盗塁のメリット、デメリットを見ていきたいと思います。今回は0アウト一塁から二盗するケースで検証してみましょう。
 「0アウト一塁」の得点期待値0.77点から盗塁を成功させて「0アウト二塁」の形にしたとき、得点期待値は1.01点まで上がります。一方、盗塁が失敗した場合「1アウト走者なし」となり得点期待値は0.23点と大きく下がります。この成功と失敗のそれぞれの差異がちょうど0.00になる点を損益分岐と呼びます。つまり、盗塁による得点力の向上を見込む場合には、この損益分岐よりも高い盗塁成功率が求められます。

 上の表に今回の検証結果をまとめてみました。2015年の得点期待値から算出すると損益分岐は69%となっています。必要な成功率は約7割と昨年のチーム単位での成功率と照らし合わせても、かなりハードルが高いことがお分かりいただけるかと思います。成功率7割を下回る場合は得点が増えないだけでなく、下がってしまうということなので、盗塁という作戦そのものに大きなリスクがあることを考えなくてはなりません。

コリジョンルールで野球が変わる!?

 スピードというテーマで今季を語る上では、コリジョンルールの存在も見逃せません。捕手のブロックが禁止されたことにより、どの球団も非常にアグレッシブな走塁が目立っています。
 こちらも例として、外野への単打で二塁走者が本塁へ進塁する確率と生還する確率を算出してみました。やはり、本塁へ進塁する確率が高くなっているようです。また進塁した際の生還確率も上昇しており、パ・リーグでは同ケースで本塁憤死した数はここまでわずか1回となっています。(なお、この1回の失敗は日本ハムが4月13日に記録しています)

※コリジョンルールの影響に興味がある方は是非下記の記事もご覧下さい。

 番組ではこれら様々なデータをご覧いただいた岩本勉さん、建山義紀さんの両解説者にも解説していただいて、見ごたえ十分の内容になっています。

 番組内ではデータコーナー以外にも期待の若手捕手・清水優心選手、守護神・増井浩俊投手の特集など見どころ満載な楽しい番組になっています。
 日本ハムファン以外の方でも楽しめる番組だと思いますので、是非ご覧いただければと思います。

※文中、表中のデータは2016年4月25日終了時点