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コラム COLUMN

不敗神話というスポーツのロマン

新井 雄太

 8月7日のロッテ-ソフトバンクにて不敗神話対決が実現しました。
 6回終了時点では5-3とソフトバンクが2点リードしている展開。実はこの試合前まで、6回終了時点でリードしている場合、ソフトバンクは45試合全勝という記録を継続中でした。
 しかし、ドラマは8回裏に突如訪れます。この回から登板したセットアッパーの五十嵐亮太が無死二三塁のピンチを招き、迎えるはロッテの主砲・デスパイネ。実はデスパイネも今季本塁打を放てば、この試合前まで12戦全勝という記録を継続していました。緊迫した雰囲気の中、デスパイネが振り抜いた打球はバックスクリーンへ飛び込む値千金の逆転3ラン。不敗神話対決はこのままロッテの勝利で幕を閉じました。

シーズン終了まで続いた本塁打の不敗神話

 ここでシーズン終了まで本塁打の不敗神話記録が続いたケースを見てみましょう。ここ10年間では2009年の小谷野栄一、2010年の高橋由伸が10戦無敗と目立つ数字になっています。
 小谷野はこの年、三塁手のレギュラーに定着すると規定打席を初めてクリア。リーグ優勝に大きく貢献したシーズンでした。
 高橋は故障の影響で前年の出場がわずか1試合のみと、再起をかけるシーズンでした。コンディションを考慮した限定的な起用ではあったものの、持ち前の勝負強さを発揮していたことが分かります。



 本塁打の有無別にここ10年間の勝率も算出してみました。多少の変動はありますが、本塁打を打った試合では平均しておよそ.650くらいの勝率になるようです。
 ちなみに本塁打が出ない場合の勝率はここ10年で5割を超えたことがありませんでした。必ず1点以上が加算される本塁打がいかに有効な攻撃かということが分かるデータでもあると思います。

過去には勝てない神話も…

 ちなみに不敗神話の逆、すなわち“不勝神話”というのも存在します。その最もたる代表例は、阪神が4シーズンにまたがって130連敗した記録です。
 これは先ほどのソフトバンクのケースと似た逆のケース。つまり7回終了時点ビハインド試合での連敗記録です。特に2011、12年は2年連続で1勝もすることができませんでした。かなり限定的なケースではありますが、数字の規模が大きく、長く続いただけにインパクトのあるデータになっています。
 ちなみに同様のケースを今季だけで見ると、12球団で唯一西武だけが未勝利。42連敗中という記録を継続しています。果たして今季中にこの記録を止められるのか、今後も要注目です。

記録が続くのも途切れるのも醍醐味


 話を戻しますが、どんなスポーツでも不敗神話という言葉はよく使われており、テレビや新聞などで目にする機会も多くあります。人々の注目を集める理由としては、やはり“100%”という数字が持つ魅力だと思います。それとは逆に、今回のソフトバンクのように1本のホームランで記録が途切れてしまうように、いつかは止まるといった儚さも見ているものの心をくすぐるのでしょう。先日の高校野球でも、明徳義塾高が敦賀気比高に延長戦の末敗れ、甲子園初戦の連勝記録は16でストップしました。

 いつかは止まると思っていても、ついついロマンを求めて応援してしまう――。これもスポーツの持つ魅力の1つといえるのかもしれません。