勝つのはどっち!?「8番投手西武打線」VS「9番投手西武打線」―「8番投手打線」を検証してみた―
今年の交流戦も残す所数試合となりました。交流戦では指名打者制の有無によって、普段のリーグ戦と少し異なるオーダーを見ることが出来るのも醍醐味の一つです。今日は今年の交流戦で西武が行い話題になった「8番に投手を起用する打順」について、本サイトのプロ野球結果予想算出にも使用されているシミュレータを活用し検証をおこなってみたいと思います。
検証1 8番投手と9番投手ではどちらが点が入るのか?
近年のプロ野球では、投手は最も打順の回ってこない9番に組み込まれることがほとんどです。そこでまず始めに、8番に投手を入れた打順と9番に投手を入れた打順でシミュレーションを行い、どちらがより得点が入るかを観察してみましょう。
西武が8番に投手を起用した5月26~28までの巨人戦(東京ドーム)、および6月2日の中日戦(ナゴヤドーム)の計4試合について、実際の試合のスタメンオーダーと9番に投手を起用したオーダー(※1)を用いて、それぞれシミュレーションを行ってみました。
今回の検証では8番に投手を起用した打順と9番に投手を起用した打順を比較しやすくするため、代打や継投などは考慮せず、試合終了まで選手交代なしでシミュレーションを行うこととします。
(※1)
今季ここまでの西武スタメンオーダーを考慮し
・ショートに金子侑司が起用された場合は7番炭谷、8番金子、9番先発投手
・ショートに渡辺直人が起用された場合は7番渡辺、8番炭谷、9番先発投手
として検証用のオーダーを作成しています。
図1と図2は使用したオーダーとシミュレーションを行って得られた1試合平均得点をまとめたものです。
「9番に投手を起用した打順」と「8番に投手を起用した打順」で、それぞれ10シーズン分(=1430試合)、1試合ごとにスコアを記録しながらシミュレーションを行いましたが、各カード平均得点にわずかな差はあるものの、いずれのカードでも8番投手と9番投手の打順の間に有意な差は認められませんでした。
検証2 1番打者にどのような状況で打順が回ってくるのか?
「8番に投手を起用する打順」と「9番投手に投手を起用する打順」についてもう少し掘り下げてみましょう。
8番に投手を置くことには9番→1番への打順のつながりを考え1番打者に好機で打順を回すという狙いもあるかと思います。そこで、8番に投手を起用した打順と9番に投手を起用した打順で、1番打者に打順が回ってきた際の状況にどのような違いがあるか見てみましょう。
表1は検証1で行ったシミュレーションで、1番打者に打席が回ってきた際の状況を記録した物です。
「8番に投手を起用する打順」と「9番投手に投手を起用する打順」の間で特に差が出たのは無死一塁の状況です。無死一塁で1番打者に打席が回ってきた回数は、8番に投手を起用した打順の際は326回、9番に投手を起用した打順の際は95回と約3.4倍の差がつきました。
1番打者に無死一塁で打席が回ってくることは、ほとんどはイニングの先頭打者となった9番打者が出塁した時に発生するため、8番に投手を起用した打順の方が発生回数は多くなっているようです。(2死で8番の投手に打順が回りチェンジとなったとき、投手よりは出塁率の高い9番打者が次のイニングの先頭打者として打席に立つため。)
検証3 「8番西武打線」VS「9番西武打線」
最後に、「8番に投手を起用した西武打線」と「9番に投手を起用した西武打線」を戦わせてみましょう。球場を西武ドームに設定し10シーズン分(=1430試合)シミュレーションを行ってみました。
検証に使用したオーダー、およびシミュレーション結果を図3に示します。
わずかに8番に投手を起用した西武打線が勝ち越したものの、他チームとの対戦をシミュレートした際、平均得点に差がなかった両チームの対戦らしく勝敗は5分5分にかなり近い値となりました。
今回行った選手交代を考慮しない検証では大きな差は見られませんでした。しかし、実際の試合では好機で投手に打順が回ってきた際に代打が出たり継投で投手の打順が変化することもあります。
今後こういった選手交代なども考慮した、より現実の試合に近い野球をコンピュータ上で再現することで、得点効率の良い打順や選手交代などの戦術を探ることが出来るかもしれません。