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速球とチェンジアップの変化量が同じ!? 広島・ジョンソンの「奥行き」を生かした投球術

金沢 慧

ジョンソン、準完全デビュー!

 3月28日のヤクルト戦で9回1安打完封。来日初先発でいきなり準完全試合と衝撃のデビューを飾った広島・ジョンソンですが、その投球にはどのような特徴があるのでしょうか。


 MLB時代の投球変化量データを基に、球種の特徴を見てみましょう。

※ここで使用しているPITCHf/xの変化量データはSPORTVISION社より研究用として提供されたデータとなります。

ジョンソンの投球変化量(MLB時代)

 左はジョンソンの縦と横の変化量を表した図になります。右は縦軸を球速に変えています。この2つを眺めてみると、変化量のみの図(左)では3つの群、球速と横変化量のグラフ(右)は4つの群があることが分かります。


速球とチェンジアップが一緒の曲がり?

 つまり、図の赤い円で囲ったように球種分類ができそうです。1は球速が遅く、縦方向に大きく曲がる球なので「カーブ」の群、2は変化量ゼロに近いので「カットボール(スライダーに近い)」を示す群となります。(←この説明も「ストレートは変化球だった【前編】」に記載してありますので、そちらをご確認ください)

 ここで注目したいのは速球とチェンジアップの赤い円。球速の違いにより、右の図では「3:チェンジアップ、4:速球(ストレート、ツーシーム)」と分かれていますが、左の図ではどちらも似たような位置にプロットされていることが分かります。

「変化量」は同じ、「球速」は違う

 つまり、ジョンソンの速球とチェンジアップは「似たような変化量」だということです。ただし、速球は平均92mph(時速148キロ)程度、チェンジアップは平均84mph(時速135キロ)程度と、球速が異なっています。

 変化量は同じなのに、球速が異なる球。つまり高低や左右の変化だけでなく、投球の「奥行き」を変えることによって、打者のタイミングを崩すピッチングが持ち味といえるでしょう。

 変化量のデータはあくまでもMLBでのものですが、日本での初登板となった3月29日も持ち前の「奥行き」を使った配球を生かして打者を翻弄し、初登板で準完全試合というパフォーマンスを見せてくれました。では、その投球内容を見てみましょう。

vs右打者 速球は内角に集める配球

 こちらは右打者に対して速球をどのゾーンに投げたかを表した図です。内角が60%以上と、多くの球を集めていることが分かります。


※どちらも投手から捕手の方向に見た図となります。vs右打者なので、左側が外角、右側が内角です。

vs右打者 チェンジアップは外角へ

 右打者に対してチェンジアップをどのゾーンに投げたかを表したグラフを見ると、50%以上が外角低めに集まっていました。

 打者の近めに速球を投げ、打者から遠いゾーンに緩球を投げる。しかも速球と遅球の変化量は変わらず、球速が異なるだけですから、リリース直後に打者がその違いを感じるのはかなり困難だったと想像できます。

 その一方で、左打者に対しては持ち味のチェンジアップはほぼ使っておらず、「奥行き」を生かした攻めが消えます。外角のストレートとカーブ、カットボールが中心の投球内容で、内角へのツーシームは数球ありましたが、打者はある程度外角にポイントを置けるようです。

 今日の中日戦で先発しますが、大島、亀澤といった左打者が対ジョンソンのカギを握りそうです。

 右打者ではルナが2014年に対左投手の内角直球系で4割超の打率を残しており、ジョンソンがカウントを取りにくる内角速球を捉えられるか注目です。逆に平田は内角が1割台。「奥行き」の幻惑に苦労するかもしれません。

 このように、PITCHf/xによる変化量と他のデータを合わせることで、試合の注目ポイントが浮き上がってきます。

 ジョンソンが2戦連続の快投を見せるのか。それとも中日打線が攻略するか。「奥行き」を使ってタイミングを外す投球術に注目してみましょう。