澤村拓一と松井裕樹。2人の侍が挑む、新たな挑戦。 タイムリーdata vol.24
侍ジャパンのあの投手も、欧州代表のあの投手も、救援転向で成功!
まずは、過去の例を振り返りましょう。近年だけでも、澤村や松井裕のように開幕前からリリーフ起用が決まっていた投手や、キャリアの中で先発・救援の転向を何度も繰り返している投手など、さまざまなパターンがあります。
今回の欧州代表に選抜されたマエストリ(オリックス)もそのひとりです。2013年シーズン終盤に救援の適性を見せたマエストリは、昨季は開幕から主にロングリリーフ要員として力を発揮。救援での防御率は1.49という安定感で、チームの躍進を陰から支えました。
リリーフでの活躍が期待される澤村と松井裕ですが、昨季同じ経験をした投手も侍ジャパンに選出されています。それは、ロッテの西野勇士です。13年に先発でチームトップタイの9勝をマークし、昨季はストッパーとしてリーグ3位の31セーブを記録した西野。彼が抑えにフィットした理由はいくつかあると思いますが、今回はひとつの「数字」を見てみましょう。
西野が活躍した理由のひとつに、三振を奪える投手だったことが考えられます。13年シーズンに先発でまずまずの奪三振率を残した西野。クライマックスシリーズではリリーバーで起用され、力強い投球を披露しました。そして抑えとして起用された14年は、高い奪三振率をマークし、好結果を残しています。
セットアッパー、ストッパーの投手は「奪三振」が際立っている
では、救援投手に奪三振は求められているのでしょうか。先発と救援で奪三振率を比較すると、どのシーズンもリリーフのほうが1.0ほど高い数字を残しています。
その救援陣も役割別に算出すると、より如実に結果が表れました。右記の2つ目の表から分かるように、セットアッパー・ストッパーの投手は奪三振率が際立っているのです。昨季各球団の抑えを任された12投手のうち、西野を含む10人は奪三振数が投球回を上回っています。もちろん奪三振の多さがリリーバーのすべてではありませんが、この役割を担う投手には「三振を奪う力」が求められるといえそうです。
空振りを奪う能力に優れた2人
それでは、澤村と松井裕のデータを見てみましょう。ご存じの方も多いと思いますが、過去には2人ともリリーフで投げた時期がありました。澤村は13年、松井裕は昨季の成績を先発と救援で比較すると、リリーフで抜群の投球を見せています。
右記の表で注目すべき点は、空振りを奪う割合が増えている点です。NPB投手の近年の奪空振り率は、先発が約8.5%で救援は約10.0%が平均値となっています。澤村も松井裕も、救援時に高い奪空振り率を記録しました。
奪空振り率のアップと同様に、奪三振率も上昇しています。先発時にも高い奪三振率をマークしていた両者ですが、リリーフではさらに高い数値を残しました。
両者とも過去に救援で投げたのは、期間にすると1カ月ほど。長いシーズンを考えれば、右記のデータはサンプル数として十分なものだといえません。ただ、この2人にはセットアッパーや抑えで活躍できる可能性が詰まっているといっても過言ではないはずです。
これからに向けて
代表合流前のオープン戦で、3試合ずつ登板している2人。澤村は無安打に抑えるピッチングで、首脳陣からも絶賛を受けています。一方の松井裕は制球難が顔をのぞかせる場面もありましたが、3試合とも自責点0の投球を見せました。そして、両者ともに「三振を奪う力」を発揮しています。
開幕をリリーフで迎える両者ですが、かつて澤村は先発への強いこだわりを語っていました。また松井裕も、大久保監督から「将来的には先発をやる投手」と評価を受けています。未来の2人がどういう起用をされるかは分かりません。ただ侍ジャパンには、抑えとして活躍した西野、先発から抑えを経て先発に再転向した牧田和久(西武)も選出されました。これからの澤村と松井裕にとって、西野と牧田の存在は最高の教材となるはずです。今回の代表戦でのピッチングはもちろん、2人がリリーフとしてどのような結果を残すのか。今季のプロ野球で、注目したいポイントだと思います。